1.なぜ“理念共有デザイン”が必要か
パソコン苦手な院長理念はあるのに、現場で活かしきれません…。紙で配って終わりになりがちです。



「見たことはあるけれど、言えない・使えない」状態が多いですね。
解決策は①短く言える一言化 ②反復の仕組み化 ③評価と連動。
この3つが設計できれば、理念は自然に日常のふるまいへ浸透します。
- ① 20〜30字のステートメントに要約できている
- ② 朝礼・掲示・ツールで毎週反復されている
- ③ 目標・評価・採用選考と同じ言葉でつながっている
2.採用:求人票から面接まで“同じ一言”で統一



応募数はあるのにミスマッチが多いです。理念と採用をどう結びつけますか?



求人票・採用LP・面接質問・内定フォローに同じフレーズを通します。
「どんな人に来てほしいか」を“行動で”示すと、共感採用が進みます。
ステートメント:「はじめてでも安心。写真で共有し痛みに配慮」
募集要項の一文:「写真とことばの丁寧な説明を、毎回3分かけて行える方」
面接質問:「初診の方が不安そうな時、あなたなら3分で何をどう伝えますか?」
評価軸の例:「“写真で共有”の実施率」「“痛み配慮”の患者様フィードバック」
求人票の抽象語(明るい・元気)より、日々の行動を条件化するのがコツ。理念の“翻訳”がミスマッチを減らします。
3.オンボーディング:初日〜30日の学習パス



新人さんが定着しません。最初の学習をどう設計すれば?



Day 1〜30の“理念体験パス”を作ります。
業務手順より先に、「医院らしさの体験」を小さく何度も。
| 日程 | 目的 | 実施内容 |
|---|---|---|
| Day 1 | 一言の共有 | A4ステートメントシート読み合わせ+先輩ロールプレイ見学 |
| Week 1 | 観察 | 「写真で3分説明」同席3回→所感メモ提出 |
| Week 2 | 練習 | 先輩に対して説明ロープレ→フィードバック |
| Week 3 | 実践 | 実患者様へ30秒前置き+写真説明→先輩が同席 |
| Week 4 | 定着 | 学びの言語化(KPT)→翌月の改善1点を宣言 |
“理念→観察→練習→実践→言語化”の順で、医院らしい接遇が自然に体へ入ります。
4.朝礼・面談での“反復デザイン”



忙しくて朝礼が情報連絡で終わります。理念を入れる余裕が…



時間は増やさず、順序を変えます。最初の60秒を理念の時間に固定。
- 今月の一言(全員で唱和)
- 昨日の“らしさ”事例を1件共有
- 今日の意識ポイントを一言(例:「写真で共有」)
個人面談は「理念→行動→結果」の順で振り返ると、評価が主観に寄りにくくなります。
5.院内掲示・ツール:見える化する“理念アセット”



掲示物が増えて雑然としがちです。効果的な掲示の型は?



3点だけ固定で置くと美しく回ります。
①A4ステートメント ②根拠3カード ③FAQカード(痛み/費用/流れ)。
- 待合:A4ステートメント+根拠カード(フレーム入り)
- カウンセリング:写真で3分説明カード(ラミネート)
- 受付:初診の流れミニカード(名刺サイズ配布)
掲示は“少なく強く”。点数を絞り、医院の一言が常に視界に入る配置にします。
6.教育資料の言語化:NG→OK言い換え辞書



言い回しのズレで雰囲気が変わります。現場で迷わない辞書を作れますか?



院内用の言い換え辞書を1ページで用意しましょう。医療広告ガイドラインも自然と守れます。
- ❌「必ず痛くありません」→ ✅「痛みを最小限にできるよう配慮します」
- ❌「一番早く治ります」→ ✅「できるだけ回数を減らせるよう努めます」
- ❌「完璧に白くなります」→ ✅「仕上がりには個人差があります。目安を写真で共有します」
7.評価・表彰:理念に紐づくKPIと称賛の設計



数値以外の評価が難しいです。理念とどう結びつけますか?



行動KPI×感謝の可視化で評価します。数値は控えめでOK。継続性と患者様の言葉を重視。
| 指標 | 定義 | 収集方法 |
|---|---|---|
| 写真共有率 | 説明時に写真を使えた割合 | 自己申告+スポット観察 |
| 痛み配慮の声 | 患者様の「安心した」コメント件数 | 受付メモ/口コミ要約 |
| らしさ事例数 | 月間の成功行動共有の件数 | 朝礼ボード集計 |
月末は「理念に沿った行動賞」を1名。小さな表彰が、行動の継続を支えます。
8.“外へも同じ言葉”を:Web・SNS・採用広報の連動



院内で浸透しても、外部発信では別の言葉を使いがちです…。



プロフィール・固定投稿・リールの冒頭に、同じ一言を必ず入れます。
サイトのヒーロー、採用LPの冒頭、SNSのBIOを同期させましょう。
「はじめてでも安心。写真で共有し痛みに配慮。」
・初診の流れ/FAQ/予約へ固定リンク
・リールは“写真で共有”の30秒ハウツーを定期配信
9.浸透度の測り方:アンケートと“語彙の一致”



KPI以外に、浸透をどう可視化しますか?



患者様とスタッフの語彙が、医院の一言に近づくかを見ます。
四半期ごとに5問アンケートで傾向を把握しましょう。
- 来院前の不安は小さくなりましたか?
- 説明は写真で分かりやすかったですか?
- 痛みへの配慮を感じましたか?
- 友人に医院の良さを一言で伝えるなら?(自由記述)
- 改善してほしい点はありますか?
自由記述に医院の一言が現れ始めたら、浸透が進んでいるサインです。
10.リスク管理:ガイドラインと個人情報の扱い



理念を広報に使うと誇張表現にならないか不安です。



誇張は不要です。姿勢+根拠+注意事項をセットで示せば大丈夫。
症例や写真は、本人同意・匿名化・注意書きの3点セットを徹底してください。
11.ぱそあんのまとめ
- 理念は「短い一言×反復×評価連動」で日常に宿る
- 採用〜研修〜掲示〜SNSまで同じフレーズで同期
- オンボーディングは“観察→練習→実践→言語化”
- 言い換え辞書と行動KPIで迷いを減らす
- 語彙の一致(患者様・スタッフ)が浸透の指標
次回記事のお知らせ(C5️⃣ 体験をそろえる「接遇スクリプト&患者体験マップ」)
次回は、受付〜診療〜会計までの接点を一本化する接遇スクリプトと、見える化に便利な患者体験マップの作り方を紹介します。

